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PCOS

Polycystic Ovary Syndrome

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)|品川区小山の産科・婦人科 - ブルーマリヌ武蔵小山女性クリニック

Polycystic Ovary Syndrome

多嚢胞性卵巣症候群
(PCOS)

多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)とは

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

婦人科疾患の中で患者数の多い症状の一つで、若い女性の約5~10%に生じ月経異常や不妊症などの原因となる病態です。卵巣内に多数ののう胞(液体がたまった袋)ができて腫大・肥厚する状態です。

症状

  • 月経不順や希発月経や無月経などの月経異常
  • 不妊
  • 男性ホルモン増加による多毛・にきび
  • 肥満 など

診断

以下の①~③すべてを満たす場合をPCOSと診断します。

日本の判断基準(2024)

  1. 月経周期異常
  2. 多嚢胞性卵巣またはAMH高値
  3. 血中男性ホルモン高値、またはLH基礎値高値かつFSH基礎値正常(採血で測定します)

原因

不明な点も多いのですが、月経を司る視床下部-下垂体-卵巣系の異常に加えて、副腎系および糖代謝異常が複雑に関与している病態と言われています。脳の下垂体からの指令により卵胞の発育を促進するLH(黄体形成ホルモン)とFSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌されますがPCOSではLHの分泌が増えてFSHとの分泌バランスが乱れ①卵胞がうまく発育できなくなり②排卵が起きにくくなります。

問題点

欧米ではPCOSはメタボリック症候群のハイリスク群と位置付けられ耐糖能異常、脂質代謝異常、糖尿病、高血圧、心血管系疾患などの合併が高いことが示され、排卵障害によってエストロゲンに恒常的に暴露するため、子宮内膜が増殖し続けて子宮内膜増殖症や子宮体癌のリスクとなりえます。よって今はすぐに妊娠を希望していなくてもリスク予防の目的で月経を正常化する治療が必要です。

治療

肥満(BMI25%以上)がある場合はまずライフスタイルの改善による減量や運動療法が必要です。肥満の解消だけでも排卵が復活するケースもあります。急激な減量は月経異常の原因となりうるため6ヶ月で5-10%の減量が目標です。
妊娠をすぐに希望するか、しないかによって治療法が異なります。

*妊娠をすぐに希望されない方:定期的に消退出血を起こさせる治療

  • プロゲスチン療法
    足りない黄体ホルモン(内服)を補充する
  • エストロゲン・プロゲスチン療法や低用量ピル
    低用量ピルなどのホルモン剤で定期的に出血を起こしPCOSの高LH状態を改善し子宮体癌のリスクを回避するため、妊娠を希望するまで低用量ピルを内服することは有用です。低用量ピルは月経痛などの症状がある場合のみ保険適応となります。
  • 漢方薬
    月経不順に効果があるとされる当帰芍薬散や加味逍遙散、温経湯など
  • メトフォルミン
    耐糖能異常や肥満がある方には効果が期待できます。

*妊娠をすぐに希望の方

  • クロミッド(成分名:クロミフェン)
    内服の排卵誘発剤で、脳の視床下部に働きかけ卵胞刺激ホルモンの分泌を促します。副作用が少なく一般的に約50%の排卵率と10~20%の妊娠率が得られるといわれますが、子宮内膜が薄くなったり女性ホルモン効果を減弱させる副作用が見られることもあります。
  • hMG-hCG療法(ゴナドトロピン療法)
    注射による卵胞発育・排卵誘発剤で、クロミフェンで反応がない場合に使用しますがPCOSの患者さんではいくつもの卵胞が同時に急に大きくなってしまい卵巣が腫れ腹水や胸水がたまってしまう卵巣過剰刺激症候群(OHSS)や多胎妊娠の発生に注意が必要です。
  • 腹腔鏡下卵巣多孔術(LOD:Laparoscopic Ovarian Drilling)
    薬物療法に反応しない場合の手術治療です。腹腔鏡下でレーザーやメスで卵巣表面に多数の穴をあけます。